‘ホテル・旅館マーケティング’ カテゴリーのアーカイブ

満足度だけ聞いている場合ではない! 顧客アンケートの戦略的活用法: (ブログ記事)

2014/01/18

先週末、約15年ぶりにスキーをしてきました。子供二人をつれた日帰りスキーでしたので、計3本ほど滑っただけでしたが、20代の頃と同じように転ぶことなく滑ることができ、達成感がありました。スキー人口が減りつつある今日、私のような「スキー休眠層」が子供たちと一緒にスキー場に戻ることが、レジャー産業活性化につながるので、次回は泊りがけで出かけたいと思います。(スキーエリアの再活性化については、じゃらんリサーチセンターの研究調査#25が参考になります)

スキー

今回スキーへ行くにあたり、ネットでゲレンデ情報をチェックしていたところ、ロープウェイ割引券なるものを発見しました。よくよく読んでみると、なかなかの割引額で、すごくお得。ただし、割引をしてもらうためには、クーポン券とともに用意されたアンケート質問に答えなくてはならない仕組みとなっていました。

KU-PON

これ、なかなか上手なやり方です。スキー場運営側にとっては、自施設を利用するスキー客の顧客情報を量的に把握するのはなかなか難しい作業。それを、集客のインセンティブとしてすでに実施している割引クーポンを活用して実施してしまうとは、なかなか良いアイディアだと思います。もちろん、既存客のすべてがクーポンを利用するわけではないので、集まった顧客データが既存客の動態すべてを表すものではありません。

しかし、どのような年齢層がどういう同行形態で、どのような認知経路を通じて、何が決め手となって自施設に来ているのかが、少なくともクーポン利用者については理解することができます。また、クーポンはネット閲覧者のみが入手できるものなので、コミュニケーションチャネルのうち、インターネットを活用する層がどういった人たちなのかについて、大枠の手がかりをつかむことができます。これを理解することで、来季以降の戦略を考えやすくなるでしょう。

実は、ホテル・旅館や、観光事業者は、「既存顧客を理解する」という点において、私がかつて所属していた消費財メーカーと比べ、格段に有利な状況にあります。通常、メーカーは、既存顧客がどんな人なのかを理解するのは非常に難しく、できたとしてもコストがかかるものものです。なぜなら、実際購入されるお客様とは触れ合うことができないからです。

したがって、リサーチ業者に頼んで、自社ブランドユーザーを探しだしてインタビューをしたり、何万人ものパネルからフィルタリングをかけて、自社ブランドユーザーを数百人みつけ、アンケートに答えてもらわなくてはなりません。聞いただけでも、お金がかかりそうですよね。

こんな苦労をしながら、自社ブランドユーザーの人口統計学的なプロファイルや購入動機、他に検討したブランド、認知経路などを聞いて、マーケティング戦略を立てています。

このお金と労力のかかる自社ブランドユーザーのリサーチが、アンケート用紙を配って書いてもらうだけでできてしまうのが、ホテル・旅館や観光事業者なのです。ただし、実体としては、施設の利用経験を通じた満足度を聞く程度にとどまっている施設がほとんど。満足度だけでなく、次のマーケティング施策を考える上で必要な質問項目を入れておけば、このアンケート用紙はもっともっと付加価値が高まります。

実際、私のクライアント様には、まず顧客アンケートの質問用紙を修正してもらい、それを通じてデータを集めながらターゲット顧客の設定、コミュニケーション戦略の構築を行っています。また、そうして作った戦略を実行した後、実際その結果がどうだったのかを図るのも、この顧客アンケート調査です。

たかが顧客アンケート調査ですが、やり方によっては、これを何倍も有効に活用することができるのです。一度、自社のアンケート調査用紙を再検討してみてはいかがでしょうか。必要あれば、弊社でもアドバイスさせていただきます

ホテルマーケティング広告研究: 複数ターゲットへの訴求事例 バリ2つのハイアット

2013/04/11

*****この記事は2011年11月に代表個人ブログで投稿されたものです******

シリーズ展開を試みた「心の琴線にふれた広告 in ホスピタリティ」ですが、琴線にふれる広告になかなか出会えないので、目についた広告に関する気づきなども、紹介してゆこうと思います。

今回は、Grand Hyatt Bali と、Bali Hyattの2つの施設を紹介するデュアル広告です。左に、Grand Hyatt Bali、右にBali Hyattの紹介。そして、一番下に、ガルーダ・インドネシア航空の紹介になっています。ちなみに、ハイアットとガルーダ・インドネシア航空が別会社なら、この広告はダブルスポンサーで、たしか違反になるのでは?と思ったりもしますが、主題ではないので、よしとします。
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この広告を選んだのは、最近とある施設様で、2つの異なるターゲット向けのプログラムを紹介する広告作成を支援していたので、その参考広告を探しているなかで目についたからです。

デュアル広告の参考事例として、この広告はよくできていると思います。
2つの施設を左右両ページで効果的に対比していますし、その対比をより際立たせるために、左右同じレイアウトを採用しながら、写真のトーンやロゴ周りの模様、キャッチコピーのフォントを色分けしています。

このような対比構造をとって、2つの異なる施設を紹介しながら、最上段と、再下段に、ハイアット全体のキャッチコピーと、茶色の帯にガルーダの広告をのせることで、あくまで2つの別の広告ではなく、1つの広告であることがわかるようになっています。

今後、もし2つの施設を紹介するような広告を作成する場合、レイアウトの取り方など、ベンチマークとして参照したい広告です。経験談ですが、このようなレイアウト確定に思いのほか時間を取られてしまうことがあります。最初から、クリエイティブにみせておき、踏襲してほしい原則を伝えておけば、こういう改善に時間をかけるかわりに、メッセージ自体の洗練に集中することができます。

逆に、この広告で、もっとこうしたら!と思う点はどこでしょうか?皆さんは、どのように考えられますか。

私個人としては、Grand HyattとBali Hyattの内容的な対比構造があまりはっきりしていないことに、じゃっかんの不満を感じます。「水と光の宮殿」、に対して、「親愛なる楽園」というのは、ちょっと抽象的・情緒的で具体性がありません。後者は、前者とくらべ、言葉から施設の雰囲気・特徴をイメージすることが難しくなっています。

また、Hyattブランドのホテルとして、何が共通で得られる部分で、どこが施設ごとに違うのか。そして、それぞれの施設は、どのようなお客様層におすすめなのか、などが書かれていると、幅広い客層に訴求できるでしょう。

さらに、細かいですが、Grand Hyattは、「バリ有数のリゾート地・ヌサドゥアに建つ」ことが書かれていますが、Bali Hyattには、ロケーションが書かれていません。まあ、広告の目的は「バリには、Hyattブランドのホテルが2つあるよ」ということを伝えることでしょうから、大きな問題はないのでしょうが、ロケーションの違いも、2うの施設の違いを訴える重要な要素。これを活用しない手はありません。
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以上、今回の気づきをまとめてみました。広告製作ですごく重要なことは、クリエイティブ側とのコミュニケーション。その際、事例を共有しながら、踏襲してほしい原則、改善してほしいポイントなどを事前に確認できると、求めるものが、出てきやすくなります。その意味で、参考になる広告ストックを自分で保有していると、すごく使えます。これからも、そうした広告を時折、ご紹介できればとおもいます。

ホテルブランディング事例研究: アヤナリゾート・バリ②  -ROCK BARの背後にあるブランドマーケティング戦略-

2013/04/03

2週間前に投稿した,アヤナリゾート&スパ バリに関するホテルブランディング事例研究の続編です。

前回は,アヤナリゾート・バリがリッツカールトン・バリからリブランドするにあたって,新たに新設したロックバーが,ブランドを象徴するビジュアルアイコンとして有効に働き,ブランドの早期構築上大きな役割を果たした点について説明しました。今回のテーマは,なぜ新たなブランドの象徴となる施設はロックバーだったのか,それが,どうしてブランド構築,集客に貢献したのか,という点,すなわち,ロックバーの背後にあるブランドマーケティング戦略について,私見をまとめてみたいと思います。

前回にも記しましたが,ビジュアルアイコンになる施設は,それ自体でも効果を及ぼしますが,それがブランドの中心エッセンスであるブランドエクイティを体現するものになっていると,より強固なブランドを構築できます。では,ロックバーは「アヤナリゾート&スパ バリ」のどのようなブランドエクイティにつながっているのでしょうか?。(ブランドに関する基礎知識を知りたい方はこちら

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まず,アヤナリゾート・バリのブランドエクイティは何か,について考えてみたいと思います。施設のWEBサイトを見ると,トップページに,下記のような記述があります。


リゾートについて

素晴らしいオーシャンビューと比類なきサービスを満喫できる
クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル

アジアのビーチジンバラン湾の崖35メートル上に広がる77ヘクタールもの美しいトロピカルガーデンに囲まれた、アヤナリゾート・アンド・スパからは壮大な眺めが広がっています。これほどのビーチリゾートが、実はバリの空港からわずか10キロほど。1.3キロものコーストラインを臨む敷地内には290室の客室と78棟のプライベートヴィラが点在し、ゆったりとしたスペースはバリ島の高級スパリゾートホテルとしてもっとも注目を浴びる存在だといえるでしょう。滞在ゲストに世界有数のバリ島高級ホテルとして最高のくつろぎを与えてくれる、プライベートのオーシャンフロントヴィラや豪華なレストラン、豊富なレクリエーション、プールサイドでのんびりとくつろぐひととき、賞を受賞したスパ・オン・ザ・ロックなどで知られるテルムマランスパでの豪華なトリートメントなど素晴らしい休暇をお約束します。世界でも類を見ないバカンスとバリならではのホスピタリティーを感じるバリ島ビーチリゾートホテルがここにあります。


これがおそらく,このブランドとは何かを,伝えるコンセプトに該当する箇所かと思いますが,目を引くのは,ヘッドラインの2行目にある。「クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル」の「クリフトップ」という言葉です。ヘッドライン下のボディーコピーの頭には,「アジアのビーチジンバラン湾の崖35メートル上に広がる…」とあり,「崖の上(クリフトップ)」という点が,コンセプトを語るうえで強調されているのがわかります。

 

この,「クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル」という記述は,ブランドエクイティの中でも,「自ブランドの競合に対する位置づけ」を示すブランドポジショニングにあたる部分であり,「私たちの施設は,他の施設と違って,こんな存在ですよ」ということを,ターゲット消費者に伝えています。そして,この「クリフトップの高級スパリゾートホテル」こそ,アヤナリゾート&スパ バリというブランドの中心エッセンスであり,ロックバーがビジュアルアイコンとなって体現しているものであると推察されます。

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「クリフトップのリゾート」という言葉は,私自身にとっては,聞きなれない言葉ですが,皆様はいかがでしょうか。個人的には,このブランドをうってゆくためにアヤナリゾートのブランドマーケターが使い始めたのではないかと考えます。では,なぜ「クリフトップの」ということをポジショニングとして前面に打ち出すのでしょうか?それは,バリ島のリゾートの競合状況を考えると,わかってきます。

バリ島の高級リゾートと言えば,ビーチリゾートであるヌサドゥア地区や内陸部のウブドが思い浮かびます。ウブドはまた違った魅力のある渓谷のリゾートですが,ビーチリゾートで言えば,基本的には,プライベートビーチのあるリゾートが一般的ではないでしょうか。(バリ島のリゾート開発の沿革については,こちらを参照) 私個人としては,バリ島に2回行っており,1回目は,ヌサドゥアのグランドハイアットバリでここには,ホテルのプライベートビーチがありました。そして,2回目がアヤナリゾート バリの前身であるリッツカールトン・バリです。

2回目のリッツカールトンバリは,「リッツカールトンに泊まってる!」という喜びもあり,それは楽しいリゾート体験ではありました。しかし,プライベートビーチという面で言うと,ホテルから崖をくだったところにちょっと狭いスペースがある程度で,かつ,波があらく,赤旗がたっており,とても泳げる状況ではありませんでしたので,ビーチを満喫してはおらず,そのかわり充実したプールを楽しみました。でも,そこはやはり「リッツカールトン」というブランドネームもありましたので,総合的には大満足だったのです。

しかし,もし,「リッツカールトン」というブランドの冠が外されていたら,どうだったでしょうか。もしかしたら,ビーチが充実していない,この施設を選びもしなかったかもしれません。アヤナリゾートバリが,リッツカールトンバリからリブランドする際,この,”ビーチリゾートの仲間ではあるが,ビーチが貧弱”,という弱点を何とかしなくてはならない状況にあったのだと思います。「ビーチが貧弱」=「崖の上にあるから」を何とかポジティブに転換する,これが,アヤナリゾートのリブランドを成功に導くための重要な戦略的課題であったはずです。

この課題を解決するためには,「崖の上,クリフトップだからこそできる,素敵な体験」を作る必要があります。それが,このロックバーです。崖の上にあるスパは見たことがあっても,崖の上にあるバーは見たことがありません。そのユニークさとともに,レストランのように料理の好き嫌いによって利用者が絞り込まれず,リゾート宿泊者すべてに開かれている施設であることも,計算されて作られているのかもしれません。

ここで,個人的に1つの疑問として浮かぶのは,「崖の上のホテルをポジティブにとらえる発想」はどのようにして生まれたのか?という点です。もちろん,アヤナリゾート・バリの場合,天才的なマーケターがそれを生み出したのかもしれませんが,何か外部からインスピレーションがあったとも考えられます。私は,このロックバーを初めて見たとき,「どこかで似たような写真をバリに絡んでみたことがある!」と思いました。それは,「ブルガリ バリ」の写真です。

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ブルガリ・バリは,ミラノについで世界で2番目につくられたブルガリの高級ホテルですが,これも,海抜150メートルの場所あたりにあると,WEBサイトには書かれています。写真をみると,なんだか,ブルガリの祖国イタリアのアマルフィーのリゾートのような見え方もしなくはありません。ちなみに,ブルガリバリは,2007年にオープンだそうです。アヤナリゾート バリのリブランドは2009年でした。もしかしたら,このあたりからのインスピレーションがあったのかな,などと空想してしまいますし,もし自分が担当者だったら,ハイエンドなリゾートブランドの動きは徹底マークすると思うので,もしかしたら,ブルガリバリのインスピレーションから,「クリフトップ・リゾート」という発想に近づけただろうか,などと考えてしまいます。

以上,アヤナリゾート&スパ バリが,ロックバーを新設して,どのようなブランドエクイティを築こうとしたのか,また,なぜそれが重要だったのかについて,私見をまとめてみました。この「クリフトップ」という要素が,同ホテルの他の施設やサービスに,いかに結び付けられているか,WEBサイトをみながら研究し,エクイティの具現化具合をもう少し調べてみたいと思います。また,違った学びがあり,今後,ホテルのブランドマーケティングを実践するうえで参考になるかもしれません。また,面白い学び,気づきがありましたら,ブログを通じて共有したいと思います。

代表: 高田

 

 

「心の琴線にふれた広告 in ホテルマーケティング」第2回 -「ありがとう」を伝える旅へ-

2013/03/21

*****この記事は2011年7月に代表個人ブログで投稿されたものです******

シリーズ「心の琴線にふれた広告 in ホテルマーケティング」の第2回目は、沖縄にあるリゾートホテル、「ルネッサンスリゾート沖縄」の雑誌広告です。たしか「家庭画報」でみつけた広告だったと思いますが、見た瞬間からものすごく好感をもった広告です。

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私は結構、沖縄好きで、離島を含めればすでに6回ほど出かけていますが、こちらのホテルは一度も検討したことがありませんでした。が、この広告をみて、次回の検討リストの1つに入りました。


キャッチコピー:
「ありがとう」を伝える旅へ

ボディコピー(というほどボリュームはありませんが..):
沖縄で過ごす記念日 金婚式・還暦・米寿・誕生日の方へ、アニバーサリーサプライズ


伝えようとしている便益
は、「ルネッサンスリゾート沖縄は、ずっと記憶に残るような最高の記念日を演出するお手伝いをします」といったところでしょうか。
広告全体を貫くアイディア: キャッチコピーそのままですが、「”ありがとう”を伝える旅へ]です。

個人的に、これ、非常に戦略的な広告だと思います。以前に紹介したルネッサンスリゾート鳴門もそうですが、ターゲットはおそらファミリーに比重を置いているように思えます。だから、この3世代のビジュアルなんでしょう。

また、沖縄なので海で泳げるハイシーズンはとくに問題なく、オフピークシーズンの需要喚起を狙っているんだと思います。そこで、「金婚式や米寿などのアニバーサリー旅行を沖縄で」と提案。「家庭画報」を読んでいらっしゃる方のご家族様でならそれもありなんでしょうね。

ターゲットとコミュニケーションの目的が明確に絞られた広告という意味で、非常に「戦略的な」広告に思えるわけです。


しかし何より自分の心に響いたのは、広告アイディアの根幹である「”ありがとう”を伝える旅へ」というキャッチコピー。そして、それを視覚的に表現している「3世代がホテルに向かって歩く写真」。おじいちゃん、おばあちゃんと子供二人が手をつなぎ、お互いを見ながら会話をしていますよね。そして、それを後ろから見守る子供の父親と母親。

おじいちゃんとおばあちゃん、子供たち、その両親それぞれが、いまどんな気持ちでいるのか、想像力がかきたてられませんか?そして、この現在という時点だけでなく、子供たちが成長したあと、この思い出がどういう意味をもってゆくのか…..

そんな想像力をくくる言葉として、「”ありがとう”を伝える旅」。誰の誰に対する「ありがとう」なのか。子供の両親から、おじいちゃんおばあちゃんへなのか。その逆なのか。いや、どちらもありでは?などなど。このキャッチコピー、ものすごく奥が深い言葉だと思います。

 

「なぜ、この広告で、ルネッサンスが検討リストに入るのか」と思われる方もいるでしょう。私の中で生じたロジックは、次のようになります。

「記念日の旅行に込められた意図や主催者の思いをここまで理解しているホテルでなら、ぜったい失敗できない思いのつまった記念日旅行を託せるかもしれない…」。 施設の内容などは、もちろんHPで確認しますし、口コミも確認します。が、そこで「どのような思いやりのあるサービスをしてもらえるのか、じゃけんに扱われないか」は記念日旅行ではものすごく大切。ここまでわかってもらえてるのなら、と期待を抱いてしまったわけです。

 

いかがでしょうか。ルネッサンスホテルは,商品開発,広告展開など,ホテルのマーケティングを考えるうで参考になる点が多いホテルです。今後も引き続き注視していきたいと思います。


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シリーズ 「心の琴線にふれた広告 in ホテルマーケティング」
第1回 「HIRAMATSU WEDDING 」はこちら

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ホテルブランディング事例研究: アヤナリゾート・バリ①

2013/03/16

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特集記事を掲載していただいた,「月刊ホテル旅館3月号」の「海外ホテルレポート」で「アヤナリゾート&スパ バリ」が紹介されておりました。このリゾートは,ホテルのブランディング,マーケティングを考える上でとても参考になる事例かと思いましたので,私なりの気づき・学びを,まとめておきたいと思います。

アヤナリゾート&スパ バリは,もともと,リッツカールトン・バリで,2009年にリブランドされたホテルです。実は,私,2005年の10月に,リッツカールトン・バリ時代の同施設に宿泊したことがあったので,施設が位置するロケーションやスペックを知っております。

ちなみに,2005年10月と言えば,このホテル近くのジンバランで爆弾テロ事件がありました。私自身は,事件当日,ウブドのホテルにおり,ニュースを聞いた兄から安否確認の電話をもらい,大いに慌てたことを今でも覚えております。事件から2日後に,同じジンバラン地区にあるリッツカールトンに移動したので,少しおびえながらの滞在でした。

 

世界的高級ホテルブランドの「リッツカールトン」から独自ブランドへのリブランドは,相当大きなダウンサイドリスクを考慮したうえでの決断であったかと思います。それ故に,新たな独自ブランドの立ち上げにあたり,かなり綿密な「ブランド戦略」がたてられていたと推察します。

ちなみに,世界的高級ホテルブランドから独自ブランドへのリブランドでは,最近の「フォーシーズンズホテル椿山荘」から,「ホテル椿山荘東京」へのリブランドも同じようなケースと言えます。しかしながら,こちらは「椿山荘」というネーミングを引き継いでいることが,知名度とブランドエクイティのリセット(振出しに戻ること)を防いでいるので,少なくとも国内の顧客層に対してはリスクマネージメントしやすいかとおもいます。それに加え,アヤナリゾート&スパ バリは,コミュニケーション上は,ほとんどゼロからの再出発になるため,リスクレベルはかなり高いと言えるでしょう。

では,リブランドにあたってどんなことをおこなったのか。「月刊ホテル旅館」の記事の中でも特に注目されているのは,新施設「ロックバー」のオープンです。このロックバー,実は一昨年,鳥羽ブランディングのプロジェクトで,「絶景の海辺にあるスタイリッシュなカフェ」の事例はないかとビジュアル検索をしていた際,偶然みつけて以来,私の中で相当印象が強く,「ぜひ行ってみたい!」と思った施設でした。

このロケーションによく作ったなと思うぐらい個性的で,かつ,ビジュアルとして記憶に残ります。実際,アヤナリゾート&スパ バリでも,ロックバーの写真をブランドを伝達する鍵となるビジュアルとして,広告・プロモーションツールに積極的に活用しているようです。

このように,ブランドを象徴するものとして戦略的に活用してゆくビジュアルを,ビジュアルアイコンと呼びます。例えば,旭山動物園の「シロクマのプール」などはよく露出されておりますが,この施設のビジュアルアイコンです。

ビジュアルアイコンとして潜在ターゲットの記憶にのこる新施設を作ったこと。これが,アヤナリゾート&スパ バリのリブランドにあたって最大の成功要因です。

「月刊ホテル旅館」の記事には,「インド洋に囲まれて,海に沈む夕日を鑑賞できるロックバーはオープン当初から脚光を浴び,(中略),バーの写真は旅行パンフレットの表紙となり,ガイドブックや雑誌も大きく掲載。旅行者にはこの写真のホテルに泊まりたい!,と訪れるお客様があいついだ」と書かれています。

ロックバーの新設以外にも,客室やレストランにバリ色を加味するリノベーションも行われ,結果としては,それ以前よりも客室稼働率は高くなっているということです。このロックバーによるブランディング,私は「雲海カフェ」を通じた「星野リゾートトマム」のブランド強化(知名度アップ)と基本メカニズムは同じかと思います。日本のリゾートホテルでも,このメカニズムを応用できる施設があるのではないでしょうか。

ここでもう1つおさえておきたいことがあります。このようなビジュアルアイコンになる施設は,それ自体でも効果を及ぼしますが,それがブランドの中心エッセンスであるブランドエクイティを体現するものになっていると,より強固なブランドを構築できます。(ブランドに関する基礎知識を知りたい方はこちら

例えば,先ほどの旭山動物園は,ブランドの便益(ブランドエクイティの主要要素の1つ)が「動物たちの命の輝きがみられる」ことです。つまり,ビジュアルアイコンである「シロクマのプール」は,ブランドエクイティを体現する施設になりますので,

「ビジュアルアイコン」 ⇒ 「ブランドエクイティ伝達・浸透」 ⇒ 「ブランドエクイティを体現する他の施設への関心」
⇒ さらなる「ブランドエクイティ伝達・浸透」

というポジティブなサイクルが出来上がり,ブランド力はどんどん高まります。ちなみに旭山動物園では,
「シロクマの水槽」(ビジュアルアイコン) ⇒ 「動物たちの命の輝きが見える」エクイティの浸透 ⇒ 「アザラシの水槽」や「オオカミをウサギの視点から眺められるボックス?」 ⇒ 「動物たちの命の輝きが見える」エクイティのさらなる浸透

というサイクルがあり,ブランド構築されたと思います。

では,ロックバーは「アヤナリゾート&スパ バリ」のどのようなブランドエクイティにつながっているのか?
そして,そのエクイティは,同ホテルの他のサービスや施設につながっているのか?

ここが私にとって大変興味のあるポイントでありますし,「アヤナリゾート&スパ バリ」のブランド戦略を理解するうえでとても重要なポイントです。
で,それは何か? もう少し研究したいので,この続きは次回の投稿へ譲りたいと思います。

代表 高田

 

 

”心の琴線にふれた広告 in ホテルマーケティング”①: 「HIRAMATSU WEDDING」

2013/03/07

*****この記事は2011年6月に代表個人ブログで投稿されたものです******

 

メーカーのマーケターとして駆け出しのころ、同じカテゴリーに所属するマーケティング担当者が集まって、みんなで広告評価力を高める「コピーランチ」というものが、月に一回程度開かれていました。自分たちのビジネスに関係ない広告も、ある広告も含めて、幅広く見て、分析して、議論する中で、広告を評価する目を養ってゆくことができた非常に良い勉強会でした。

その中で、毎月一人が順番に行う発表がありました。「Advertising that made me buy」(私を買う気にさせた広告)と名づけられており、自分自身が思わず買いたくなってしまった広告を1つ取り上げ、消費者として、マーケターとしての双方から分析します。そして、「なぜ買う気にさせられたのか」「そのエッセンスを、自分がつくる広告にどう活かせるのか」を発表するものでした。

そこで、この度、「Advertising that made me buy」を、宿泊やウェディング、観光など、ホスピタリティの分野でやってみることにしました。名付けて、「心の琴線にふれた広告 in ホテルマーケティング」。できれば、月1回ぐらいの頻度で発表してゆきたいと思います。

記念すべき第1回で取り上げるのは、「レストランひらまつ」のウェディング広告。(レストランですが,「ホテルマーケティング」に関連するということでお許しを)

日経BPが出版する「DAZZLE」という購読者向けに配る冊子で見つけました。来週末に、友人が広尾の「レストランひらまつ」で結婚式を挙げることになっていることもあり、この広告が妙に琴線に触れてしまいました。主催者のみならず、参列者の気を引いた広告ということになります。

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キャッチコピー:
「この料理だったら、きっと喜んでもらえるはず」

ボディコピー
ミシュラン最長の星に輝き続け、世界のフランス料理界をけん引するポール・ボキューズ氏。85歳になる今も変わらない彼のスタッフへの口癖は「お客さまは喜んでいるかい?」というその一言訪れるすべての人に喜んでもらいたいというシェフたちの思いが伝わってくる

伝えようとしている便益は、おそらく「ひらまつでのウェディングなら、最高の料理による、おもてなしができる」でしょう。その便益を伝える広告に、お料理の写真が右下にほんの少ししか露出されていません。

広告全体を貫くアイディアは、「フランス料理界の巨匠シェフが、あなたの大切なお客様のためにチーム総出で準備する最高の料理でおもてなし」といったところでしょうか。

シェフが登場する広告はみたことがありますが、シェフが総出で相談している広告は、初めてです。「レストランひらまつ」というフレンチにおけるブランド力があってこそ生きる広告ですが、そのブランド力を効果的に使い、さらに高めているものだと思います。

友人の結婚式に参加するのがとても楽しみです。

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追加補足分析
この広告がなぜすぐれていると思うのか、マーケター視点での分析を入れておきます。

① 便益を膨らませるアイディアになっている:
「フランス料理界の巨匠シェフが、チーム総出で準備する」という広告アイディアは、「最高の料理でのおもてなし」という便益を膨らませています。どんなにアイディアが面白くても、そのアイディアが戦略的便益からはずれてしまうと、広告の訴求力は落ちてしまいます。実際、おもしろいけど、買う気にさせない広告は多く見受けれますが、それはアイディアが便益からはずれているからです。

② 独自性がある/競合と差別化されている:
「最高の料理でのもてなし」という便益は、独自性があるとは言いきれません。しかし、「フランス料理界の巨匠シェフが、チーム総出で準備する」というアイディアには独自性があります。また、「料理の写真が全面にでてこない」という見せ方も独自性があります。結果として、この違和感、新鮮さが、消費者の目をとめ、印象を深くします。

③「へー、そうなんだー」という発見がある
ただ独自性が高いだけでは十分ではありません。その便益やブランドに対する価値をたかめるような新しい理解/発見が提供されなくてはなりません。「フレンチの巨匠がこんなに一生懸命考えてる」というのは、間違いなく「へー、そうなんだ」という発見になっていると思います。

今回の「HIRAMATSU WEDDING」の広告は、上記3つの重要評価指標を満たす、優れた広告であると分析します。

運営: リ・ブランディングジャパン株式会社

「観光地マーケティング」と「ホテル・旅館マーケティング」に関する気づき,学び,参考&成功事例を紹介するブログです。

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