ホテルブランディング事例研究: アヤナリゾート・バリ①


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特集記事を掲載していただいた,「月刊ホテル旅館3月号」の「海外ホテルレポート」で「アヤナリゾート&スパ バリ」が紹介されておりました。このリゾートは,ホテルのブランディング,マーケティングを考える上でとても参考になる事例かと思いましたので,私なりの気づき・学びを,まとめておきたいと思います。

アヤナリゾート&スパ バリは,もともと,リッツカールトン・バリで,2009年にリブランドされたホテルです。実は,私,2005年の10月に,リッツカールトン・バリ時代の同施設に宿泊したことがあったので,施設が位置するロケーションやスペックを知っております。

ちなみに,2005年10月と言えば,このホテル近くのジンバランで爆弾テロ事件がありました。私自身は,事件当日,ウブドのホテルにおり,ニュースを聞いた兄から安否確認の電話をもらい,大いに慌てたことを今でも覚えております。事件から2日後に,同じジンバラン地区にあるリッツカールトンに移動したので,少しおびえながらの滞在でした。

 

世界的高級ホテルブランドの「リッツカールトン」から独自ブランドへのリブランドは,相当大きなダウンサイドリスクを考慮したうえでの決断であったかと思います。それ故に,新たな独自ブランドの立ち上げにあたり,かなり綿密な「ブランド戦略」がたてられていたと推察します。

ちなみに,世界的高級ホテルブランドから独自ブランドへのリブランドでは,最近の「フォーシーズンズホテル椿山荘」から,「ホテル椿山荘東京」へのリブランドも同じようなケースと言えます。しかしながら,こちらは「椿山荘」というネーミングを引き継いでいることが,知名度とブランドエクイティのリセット(振出しに戻ること)を防いでいるので,少なくとも国内の顧客層に対してはリスクマネージメントしやすいかとおもいます。それに加え,アヤナリゾート&スパ バリは,コミュニケーション上は,ほとんどゼロからの再出発になるため,リスクレベルはかなり高いと言えるでしょう。

では,リブランドにあたってどんなことをおこなったのか。「月刊ホテル旅館」の記事の中でも特に注目されているのは,新施設「ロックバー」のオープンです。このロックバー,実は一昨年,鳥羽ブランディングのプロジェクトで,「絶景の海辺にあるスタイリッシュなカフェ」の事例はないかとビジュアル検索をしていた際,偶然みつけて以来,私の中で相当印象が強く,「ぜひ行ってみたい!」と思った施設でした。

このロケーションによく作ったなと思うぐらい個性的で,かつ,ビジュアルとして記憶に残ります。実際,アヤナリゾート&スパ バリでも,ロックバーの写真をブランドを伝達する鍵となるビジュアルとして,広告・プロモーションツールに積極的に活用しているようです。

このように,ブランドを象徴するものとして戦略的に活用してゆくビジュアルを,ビジュアルアイコンと呼びます。例えば,旭山動物園の「シロクマのプール」などはよく露出されておりますが,この施設のビジュアルアイコンです。

ビジュアルアイコンとして潜在ターゲットの記憶にのこる新施設を作ったこと。これが,アヤナリゾート&スパ バリのリブランドにあたって最大の成功要因です。

「月刊ホテル旅館」の記事には,「インド洋に囲まれて,海に沈む夕日を鑑賞できるロックバーはオープン当初から脚光を浴び,(中略),バーの写真は旅行パンフレットの表紙となり,ガイドブックや雑誌も大きく掲載。旅行者にはこの写真のホテルに泊まりたい!,と訪れるお客様があいついだ」と書かれています。

ロックバーの新設以外にも,客室やレストランにバリ色を加味するリノベーションも行われ,結果としては,それ以前よりも客室稼働率は高くなっているということです。このロックバーによるブランディング,私は「雲海カフェ」を通じた「星野リゾートトマム」のブランド強化(知名度アップ)と基本メカニズムは同じかと思います。日本のリゾートホテルでも,このメカニズムを応用できる施設があるのではないでしょうか。

ここでもう1つおさえておきたいことがあります。このようなビジュアルアイコンになる施設は,それ自体でも効果を及ぼしますが,それがブランドの中心エッセンスであるブランドエクイティを体現するものになっていると,より強固なブランドを構築できます。(ブランドに関する基礎知識を知りたい方はこちら

例えば,先ほどの旭山動物園は,ブランドの便益(ブランドエクイティの主要要素の1つ)が「動物たちの命の輝きがみられる」ことです。つまり,ビジュアルアイコンである「シロクマのプール」は,ブランドエクイティを体現する施設になりますので,

「ビジュアルアイコン」 ⇒ 「ブランドエクイティ伝達・浸透」 ⇒ 「ブランドエクイティを体現する他の施設への関心」
⇒ さらなる「ブランドエクイティ伝達・浸透」

というポジティブなサイクルが出来上がり,ブランド力はどんどん高まります。ちなみに旭山動物園では,
「シロクマの水槽」(ビジュアルアイコン) ⇒ 「動物たちの命の輝きが見える」エクイティの浸透 ⇒ 「アザラシの水槽」や「オオカミをウサギの視点から眺められるボックス?」 ⇒ 「動物たちの命の輝きが見える」エクイティのさらなる浸透

というサイクルがあり,ブランド構築されたと思います。

では,ロックバーは「アヤナリゾート&スパ バリ」のどのようなブランドエクイティにつながっているのか?
そして,そのエクイティは,同ホテルの他のサービスや施設につながっているのか?

ここが私にとって大変興味のあるポイントでありますし,「アヤナリゾート&スパ バリ」のブランド戦略を理解するうえでとても重要なポイントです。
で,それは何か? もう少し研究したいので,この続きは次回の投稿へ譲りたいと思います。

代表 高田

 

 

運営: リ・ブランディングジャパン株式会社

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