ホテルブランディング事例研究: アヤナリゾート・バリ②  -ROCK BARの背後にあるブランドマーケティング戦略-


2週間前に投稿した,アヤナリゾート&スパ バリに関するホテルブランディング事例研究の続編です。

前回は,アヤナリゾート・バリがリッツカールトン・バリからリブランドするにあたって,新たに新設したロックバーが,ブランドを象徴するビジュアルアイコンとして有効に働き,ブランドの早期構築上大きな役割を果たした点について説明しました。今回のテーマは,なぜ新たなブランドの象徴となる施設はロックバーだったのか,それが,どうしてブランド構築,集客に貢献したのか,という点,すなわち,ロックバーの背後にあるブランドマーケティング戦略について,私見をまとめてみたいと思います。

前回にも記しましたが,ビジュアルアイコンになる施設は,それ自体でも効果を及ぼしますが,それがブランドの中心エッセンスであるブランドエクイティを体現するものになっていると,より強固なブランドを構築できます。では,ロックバーは「アヤナリゾート&スパ バリ」のどのようなブランドエクイティにつながっているのでしょうか?。(ブランドに関する基礎知識を知りたい方はこちら

rock-bar-bali

まず,アヤナリゾート・バリのブランドエクイティは何か,について考えてみたいと思います。施設のWEBサイトを見ると,トップページに,下記のような記述があります。


リゾートについて

素晴らしいオーシャンビューと比類なきサービスを満喫できる
クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル

アジアのビーチジンバラン湾の崖35メートル上に広がる77ヘクタールもの美しいトロピカルガーデンに囲まれた、アヤナリゾート・アンド・スパからは壮大な眺めが広がっています。これほどのビーチリゾートが、実はバリの空港からわずか10キロほど。1.3キロものコーストラインを臨む敷地内には290室の客室と78棟のプライベートヴィラが点在し、ゆったりとしたスペースはバリ島の高級スパリゾートホテルとしてもっとも注目を浴びる存在だといえるでしょう。滞在ゲストに世界有数のバリ島高級ホテルとして最高のくつろぎを与えてくれる、プライベートのオーシャンフロントヴィラや豪華なレストラン、豊富なレクリエーション、プールサイドでのんびりとくつろぐひととき、賞を受賞したスパ・オン・ザ・ロックなどで知られるテルムマランスパでの豪華なトリートメントなど素晴らしい休暇をお約束します。世界でも類を見ないバカンスとバリならではのホスピタリティーを感じるバリ島ビーチリゾートホテルがここにあります。


これがおそらく,このブランドとは何かを,伝えるコンセプトに該当する箇所かと思いますが,目を引くのは,ヘッドラインの2行目にある。「クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル」の「クリフトップ」という言葉です。ヘッドライン下のボディーコピーの頭には,「アジアのビーチジンバラン湾の崖35メートル上に広がる…」とあり,「崖の上(クリフトップ)」という点が,コンセプトを語るうえで強調されているのがわかります。

 

この,「クリフトップのバリ島高級スパリゾートホテル」という記述は,ブランドエクイティの中でも,「自ブランドの競合に対する位置づけ」を示すブランドポジショニングにあたる部分であり,「私たちの施設は,他の施設と違って,こんな存在ですよ」ということを,ターゲット消費者に伝えています。そして,この「クリフトップの高級スパリゾートホテル」こそ,アヤナリゾート&スパ バリというブランドの中心エッセンスであり,ロックバーがビジュアルアイコンとなって体現しているものであると推察されます。

ayana

「クリフトップのリゾート」という言葉は,私自身にとっては,聞きなれない言葉ですが,皆様はいかがでしょうか。個人的には,このブランドをうってゆくためにアヤナリゾートのブランドマーケターが使い始めたのではないかと考えます。では,なぜ「クリフトップの」ということをポジショニングとして前面に打ち出すのでしょうか?それは,バリ島のリゾートの競合状況を考えると,わかってきます。

バリ島の高級リゾートと言えば,ビーチリゾートであるヌサドゥア地区や内陸部のウブドが思い浮かびます。ウブドはまた違った魅力のある渓谷のリゾートですが,ビーチリゾートで言えば,基本的には,プライベートビーチのあるリゾートが一般的ではないでしょうか。(バリ島のリゾート開発の沿革については,こちらを参照) 私個人としては,バリ島に2回行っており,1回目は,ヌサドゥアのグランドハイアットバリでここには,ホテルのプライベートビーチがありました。そして,2回目がアヤナリゾート バリの前身であるリッツカールトン・バリです。

2回目のリッツカールトンバリは,「リッツカールトンに泊まってる!」という喜びもあり,それは楽しいリゾート体験ではありました。しかし,プライベートビーチという面で言うと,ホテルから崖をくだったところにちょっと狭いスペースがある程度で,かつ,波があらく,赤旗がたっており,とても泳げる状況ではありませんでしたので,ビーチを満喫してはおらず,そのかわり充実したプールを楽しみました。でも,そこはやはり「リッツカールトン」というブランドネームもありましたので,総合的には大満足だったのです。

しかし,もし,「リッツカールトン」というブランドの冠が外されていたら,どうだったでしょうか。もしかしたら,ビーチが充実していない,この施設を選びもしなかったかもしれません。アヤナリゾートバリが,リッツカールトンバリからリブランドする際,この,”ビーチリゾートの仲間ではあるが,ビーチが貧弱”,という弱点を何とかしなくてはならない状況にあったのだと思います。「ビーチが貧弱」=「崖の上にあるから」を何とかポジティブに転換する,これが,アヤナリゾートのリブランドを成功に導くための重要な戦略的課題であったはずです。

この課題を解決するためには,「崖の上,クリフトップだからこそできる,素敵な体験」を作る必要があります。それが,このロックバーです。崖の上にあるスパは見たことがあっても,崖の上にあるバーは見たことがありません。そのユニークさとともに,レストランのように料理の好き嫌いによって利用者が絞り込まれず,リゾート宿泊者すべてに開かれている施設であることも,計算されて作られているのかもしれません。

ここで,個人的に1つの疑問として浮かぶのは,「崖の上のホテルをポジティブにとらえる発想」はどのようにして生まれたのか?という点です。もちろん,アヤナリゾート・バリの場合,天才的なマーケターがそれを生み出したのかもしれませんが,何か外部からインスピレーションがあったとも考えられます。私は,このロックバーを初めて見たとき,「どこかで似たような写真をバリに絡んでみたことがある!」と思いました。それは,「ブルガリ バリ」の写真です。

burugari bari

ブルガリ・バリは,ミラノについで世界で2番目につくられたブルガリの高級ホテルですが,これも,海抜150メートルの場所あたりにあると,WEBサイトには書かれています。写真をみると,なんだか,ブルガリの祖国イタリアのアマルフィーのリゾートのような見え方もしなくはありません。ちなみに,ブルガリバリは,2007年にオープンだそうです。アヤナリゾート バリのリブランドは2009年でした。もしかしたら,このあたりからのインスピレーションがあったのかな,などと空想してしまいますし,もし自分が担当者だったら,ハイエンドなリゾートブランドの動きは徹底マークすると思うので,もしかしたら,ブルガリバリのインスピレーションから,「クリフトップ・リゾート」という発想に近づけただろうか,などと考えてしまいます。

以上,アヤナリゾート&スパ バリが,ロックバーを新設して,どのようなブランドエクイティを築こうとしたのか,また,なぜそれが重要だったのかについて,私見をまとめてみました。この「クリフトップ」という要素が,同ホテルの他の施設やサービスに,いかに結び付けられているか,WEBサイトをみながら研究し,エクイティの具現化具合をもう少し調べてみたいと思います。また,違った学びがあり,今後,ホテルのブランドマーケティングを実践するうえで参考になるかもしれません。また,面白い学び,気づきがありましたら,ブログを通じて共有したいと思います。

代表: 高田

 

 

運営: リ・ブランディングジャパン株式会社

「観光地マーケティング」と「ホテル・旅館マーケティング」に関する気づき,学び,参考&成功事例を紹介するブログです。

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